共有

第153話

彼の顔色が土っぽくなったので、弥生は彼が思い出したのではないかと推測した。

「どう?田中さん、昔言ったことを忘れていないでしょう?」

そばの友人が好奇心に駆られて尋ねた。「猛、昔何て言ったんだ?」

猛は頭が真っ白で、ずっと弥生が自分の家柄を軽蔑していて、もっと権威のある人物に寄ってゆくと思い込んでいたが、自分の言ったことが彼女に聞かれたとは思ってもいなかった。

昔のあの言葉で美人を逃がした可能性があると思うと、猛は自分を殴りたいとおもった。

「違うよ!」猛は歯を食いしばって、赤い目で説明した。「昔のあれは、ただ面白いから言ったの、決して失礼するつもりはなかったんだ」

彼が本当に遊び心でいたなら、彼女が温泉にいくのを知っただけでは遠くまで彼女を探しに行くわけではなかった。

「面白い?」弥生は首を少し傾げて、その言葉を考えているようだった。しばらくしてから徐々に口を開いた。「田中さんの目には、そんな話が面白いと思うのか?」

猛:「そういう意味じゃない!俺は.......」

「もういいの、田中さん。話は元に戻しましょう。私たちは今日、協力の話をしに来たのだ。もし宮崎グループと協力する意向がなければ、私たちがここでいる必要もない」

猛は悔しいようだ。ようやく原因を知ったのだから、このまま手放すわけにはいかない。

すぐに、猛は弥生の細い白い腕を握った。「弥生、説明させてください」

弥生は眉をひそめた。「放してください」

「いいえ、まず説明させてくれ。あれはただ.......」

バタン!

半分閉まっているドアが突然強く蹴られて、部屋にいる人たちはびっくりした。

何人かの黒い服を着た大男が部屋に押し寄せた。

「何様だ?誰が入らせたの?」

誰かが質問したばかりに、一人の大男に頭を押さえられ、冷たい床に押しつけられた。

今回のイベントの主催者である猛は顔色が変わり、弥生の手を放して立ち上がらざるを得ない。「お前らは何やってんの?ここがどこか知っているか?俺は誰か知ってるか?」

バン!

言葉が終わると、猛は顔にパンチを食らって、吹っ飛ばされた。

「ああ!!」猛のそばにいた女の子はびっくりして悲鳴を上げた。

理優もびっくりして弥生の服を掴んだ。

弥生も今日こんなことに出くわすとは思わなかった。
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status